ある日の事でございます。

蜘蛛の糸

くものいと

芥川龍之介

蜘蛛の糸芥川龍之介

『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)の書き出しは『ある日の事でございます。』です。

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書き出し全文280字

ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。

やがて御釈迦様はその池のふちに御佇みになって、水の面を蔽っている蓮の葉の間から、ふと下の容子を御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当って居りますから、水晶のような水を透き徹して、三途の河や針の山の景色が、丁度覗き眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。

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奥付

作品
蜘蛛の糸(くものいと)
作家
芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ、1892–1927)
底本
「芥川龍之介全集2」ちくま文庫、筑摩書房
引用
書き出し280字。青空文庫の本文を底本どおりに引用(くの字点のみ縦書き用の字に置換)

芥川龍之介

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