禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。

鼻

はな

芥川龍之介一九一六

鼻芥川龍之介

『鼻』(芥川龍之介、1916年)の書き出しは『禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。』です。

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書き出し全文280字

禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。長さは五六寸あって上唇の上から顋の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのである。

五十歳を越えた内供は、沙弥の昔から、内道場供奉の職に陞った今日まで、内心では始終この鼻を苦に病んで来た。勿論表面では、今でもさほど気にならないような顔をしてすましている。これは専念に当来の浄土を渇仰すべき僧侶の身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。それよりむしろ、自分で鼻を気にしていると云う事を、人に知られるのが嫌だったからである。

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奥付

作品
鼻(はな)
作家
芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ、1892–1927)
初出
「新思潮」、1916年
底本
「芥川龍之介全集1」ちくま文庫、筑摩書房
引用
書き出し280字。青空文庫の本文を底本どおりに引用(くの字点のみ縦書き用の字に置換)

芥川龍之介

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