小田原熱海間に、
軽便鉄道敷設の 工事が 始まったのは、 良平の 八つの 年だった。
トロッコ
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小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事を――といったところが、唯トロッコで土を運搬する――それが面白さに見に行ったのである。
トロッコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇んでいる。トロッコは山を下るのだから、人手を借りずに走って来る。煽るように車台が動いたり、土工の袢天の裾がひらついたり、細い線路がしなったり――良平はそんなけしきを眺めながら、土工になりたいと思う事がある。せめては一度でも土工と一しょに、トロッコへ乗りたいと思う事もある。
奥付
- 作品
- トロッコ(とろっこ)
- 作家
- 芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ、1892–1927)
- 底本
- 「蜘蛛の糸・杜子春」新潮文庫、新潮社
- 引用
- 書き出し262字。青空文庫の本文を底本どおりに引用(くの字点のみ縦書き用の字に置換)
芥川龍之介
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