ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。

セロ弾きのゴーシュ

せろひきのごーしゅ

宮沢賢治

セロ弾きのゴーシュ宮沢賢治

『セロ弾きのゴーシュ』(宮沢賢治)の書き出しは『ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。』です。

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書き出し全文493字

ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。けれどもあんまり上手でないという評判でした。上手でないどころではなく実は仲間の楽手のなかではいちばん下手でしたから、いつでも楽長にいじめられるのでした。

ひるすぎみんなは楽屋に円くならんで今度の町の音楽会へ出す第六交響曲の練習をしていました。

トランペットは一生けん命歌っています。

ヴァイオリンも二いろ風のように鳴っています。

クラリネットもボーボーとそれに手伝っています。

ゴーシュも口をりんと結んで眼を皿のようにして楽譜を見つめながらもう一心に弾いています。

にわかにぱたっと楽長が両手を鳴らしました。みんなぴたりと曲をやめてしんとしました。楽長がどなりました。

「セロがおくれた。トォテテ テテテイ、ここからやり直し。はいっ。」

みんなは今の所の少し前の所からやり直しました。ゴーシュは顔をまっ赤にして額に汗を出しながらやっといま云われたところを通りました。ほっと安心しながら、つづけて弾いていますと楽長がまた手をぱっと拍ちました。

「セロっ。糸が合わない。困るなあ。ぼくはきみにドレミファを教えてまでいるひまはないんだがなあ。」

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奥付

作品
セロ弾きのゴーシュ(せろひきのごーしゅ)
作家
宮沢賢治(みやざわ けんじ、1896–1933)
底本
「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫、新潮社
引用
書き出し493字。青空文庫の本文を底本どおりに引用(くの字点のみ縦書き用の字に置換)

宮沢賢治

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