うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。

三四郎

さんしろう

夏目漱石一九〇八

三四郎夏目漱石

『三四郎』(夏目漱石、1908年)の書き出しは『うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。』です。

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書き出し全文328字

うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。このじいさんはたしかに前の前の駅から乗ったいなか者である。発車まぎわに頓狂な声を出して駆け込んで来て、いきなり肌をぬいだと思ったら背中にお灸のあとがいっぱいあったので、三四郎の記憶に残っている。じいさんが汗をふいて、肌を入れて、女の隣に腰をかけたまでよく注意して見ていたくらいである。

女とは京都からの相乗りである。乗った時から三四郎の目についた。第一色が黒い。三四郎は九州から山陽線に移って、だんだん京大阪へ近づいて来るうちに、女の色が次第に白くなるのでいつのまにか故郷を遠のくような哀れを感じていた。それでこの女が車室にはいって来た時は、なんとなく異性の味方を得た心持ちがした。

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