十月早稲田に移る。

文鳥

ぶんちょう

夏目漱石

文鳥夏目漱石

『文鳥』(夏目漱石)の書き出しは『十月早稲田に移る。』です。

270字約25秒で読めます

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書き出し全文270字

十月早稲田に移る。伽藍のような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖で支えていると、三重吉が来て、鳥を御飼いなさいと云う。飼ってもいいと答えた。しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥ですと云う返事であった。

文鳥は三重吉の小説に出て来るくらいだから奇麗な鳥に違なかろうと思って、じゃ買ってくれたまえと頼んだ。ところが三重吉は是非御飼いなさいと、同じような事を繰り返している。うむ買うよ買うよとやはり頬杖を突いたままで、むにゃむにゃ云ってるうちに三重吉は黙ってしまった。おおかた頬杖に愛想を尽かしたんだろうと、この時始めて気がついた。

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